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    03月02日付

    ■ハンセン病――報道の罪は重かった

     医学的な理由がなくなったのに、患者や元患者を何十年間も療養所に閉じこめてきたのはなぜか。ハンセン病問題検証会議が、政府や医学界などだけでなく、報道機関の責任を厳しく問う最終報告書をまとめた。

     ハンセン病は第2次大戦後に特効薬ができて完治するようになった。伝染する力が弱いこともわかり、強制隔離をやめるよう国際会議で何度も勧告された。

     01年の熊本地裁の判決は、遅くとも1960年以降の隔離は人権を侵して違憲だと認定した。国が隔離政策を定めた法律を廃止したのは96年になってからだ。

     検証会議はこの判決を受けてつくられた。費用は厚生労働省が負担し、医師や弁護士、元患者、学者らが隔離政策の原因と責任を追及した。

     大きな節目は隔離政策を強めた53年の法改正だった。戦後、隔離の廃止を求める運動や国会での質問があった。ところが、ハンセン病の権威とされた故光田健輔氏ら3人の療養所園長が国会で証言し、患者を隔離し監禁できる権限の強化を求めた。このため医学的な深い議論をしないまま、法律が改定された。

     療養所園長らの発言は、日本でも特効薬の利用が始まって完治する患者が出ていた事実を無視したものだった。ハンセン病の専門医であるにもかかわらず、世界の医学界の常識からかけ離れた態度をとったのは、療養所を従来通り維持し、自分たちの地位を守りたかったからだ。そう検証会議は批判した。

     入所者の訴えや、隔離は不要という意見があることを当時の報道機関は知ることができたはずだ。人権侵害の疑いがあれば、それを報道するのが務めだ。しかし、新聞は「野放しのライ患者」といった表現で犯罪者扱いする記事を大きく載せた。その一方で、「人権を認めよ」という入所者の運動は目立たない小さな記事が多かった。

     当時の新聞はこぞって光田氏を「救らいの父」とほめそやした。らいとはハンセン病の古い呼び方である。朝日新聞社は50年に「救らい事業への貢献」を理由に朝日賞を贈った。光田氏が文化勲章を受章したのはその翌年である。いまにすれば、不明を恥じるほかない。

     検証会議は「現代社会において、発生する問題の多くは報じられることによって社会に認知され、政策決定者の意思決定にも大きな影響を与える。報道者が気づかぬということは、社会的に問題を抹殺したのも同然である」と指摘する。

     療養所を訪ねて入所者の声を聞き、医学的な取材をする記者はほとんどいなかった。新聞をはじめとする報道機関は今も、目前の大きな出来事を追いかけるのは得意だが、長く続いている理不尽さに目を向けるのは苦手だ。検証会議には新聞記者も参加しており、報道機関への厳しい指摘は自らへの戒めでもある。

     ことは病気にとどまらない。さまざまな分野での人権侵害を見すごさぬよう改めて心したい。


    ■日韓関係――大統領演説への戸惑い

     朝鮮半島が日本の植民地支配下にあった86年前の昨日、民族の独立を訴える声がソウルからわき上がった。「3・1独立運動」だ。いま国民の祝日となり、韓国民の民族意識が大いに高ぶる。

     そのことは十分わきまえたうえでも、盧武鉉大統領が記念行事で行った演説には唐突感が否めない。

     大半を日本との関係にあてた演説のなかで日韓関係の進展を評価しつつも、更なる発展のために日本側が「真の自己反省」を示すよう求めた。

     「過去の真実を解明し、心から謝罪し、反省し、賠償するものがあれば賠償し、和解する」ことが「過去清算の普遍的な方式」であって、日本にはそうした努力が足りないとも指摘した。

     ますます深まる経済関係。サッカーW杯の共催成功。「韓流」ブーム。日本人の韓国への親近感はかつてないほど増した。とはいえ、植民地支配の歴史をどう総括したらいいかをめぐる問題となると、日韓関係はまだまだぎこちない。

     小泉首相の靖国参拝が韓国の人々の神経を逆なでしているのは確かだし、植民地支配や侵略戦争の被害を受けた側の思いに日本人が鈍感でありがちなことも否定はできない。朝日新聞は社説で、自らの過去をもっとしっかりと総括し、教訓をくむべきだと主張してきた。

     その一方で、日本は95年の「村山首相談話」で植民地支配に「痛切な反省」と「心からのお詫(わ)び」を表明し、それを踏まえて3年後、小渕首相と金大中大統領が共同宣言で「未来志向」の関係構築を確認した。近年の日韓の緊密化はその延長線上にある。

     大衆の人気に支えられて政権の座に就いた盧氏が、国民の間にくすぶる日本の歴史認識への批判を意識せざるを得ないことは分からぬではない。自国の歴史の見直しを政権の実績にしようとしているさなかの国内向けの演説でもあろう。

     しかし、「謝罪」を言い、「賠償」という言葉をいたずらに使うことには、日韓の将来を真剣に考える我々も戸惑う。

     大統領は日本人拉致問題に同情を示しつつ「日本もまた日帝から数千、数万倍の苦痛を受けたわが国民の怒りを理解しなければならない」とも語った。拉致問題に多大な関心を寄せながら、過去の植民地時代に行ったことを忘れたかのような日本にクギを刺したかったのだろう。それは理解できる。

     だが、植民地支配という歴史と北朝鮮による拉致は同じ次元の問題ではない。北朝鮮の対日非難に通ずるかのような物言いは、日韓関係にとって逆効果だ。小泉首相は北朝鮮との過去の清算をめざして2度の訪朝をしたが、交渉の進展を妨げているのはむしろ北朝鮮である。大統領はそこを冷静に見てほしい。

     北朝鮮問題の解決には、まず日韓の協調である。日本は歴史をもっと見つめなければならないが、韓国がいたずらに違いを強調することも賢明ではない。



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