社説2 靖国参拝に一石投じた判決(4/8)
小泉純一郎首相の靖国神社参拝は憲法に違反するという判断を、福岡地裁が示した。これまでも小泉首相の靖国参拝に対しては、中国、韓国が厳しく批判しているだけでなく、国内でも慎重な対応を求める意見があった。憲法の価値を守る役割を負う裁判所から違憲判断を突き付けられたことを、小泉首相は重く受け止めるべきである。
小泉首相側はこれまで「私的な参拝である」と強調してきた。だが判決は、公用車を使用し秘書官を随行したこと、「内閣総理大臣小泉純一郎」と記帳し献花に同じ名札をつけたこと、官房長官を通じ談話を発表したことなどを指摘し、首相の職務の執行であったと認定した。首相が私人か公人かの区別をあえて明確にしていない以上、このように判断されてもやむを得まい。
小泉首相の靖国参拝を巡っては、今年2、3月に大阪、松山両地裁がいずれも憲法判断を示さないまま原告の請求を退けている。紛争解決に必要な範囲でのみ憲法判断をすべきであるという違憲審査制度の建前からいうとこの判決に異論もあろう。
しかし判決も述べるように、憲法に違反する疑いのある国政の最高責任者の行為を是正する方法として損害賠償訴訟に形を借りるしかない現状では、許容されるものと考える。むしろ憲法判断を回避することこそ司法府に期待される「憲法の番人」の役割を放棄するものだろう。
戦争指導者が合祀(ごうし)されている靖国神社への参拝を繰り返す小泉首相のかたくなな姿勢が日中関係に緊張をもたらし、韓国からも抗議を受けている。最高裁は、愛媛玉ぐし料訴訟判決で、明治維新以降国家が神道と結びつき多くの弊害をもたらした反省から政教分離原則が定められたという憲法の制定経緯を指摘した。首相の靖国参拝は、平和国家として再出発した日本に疑いの目を向けさせることになりかねない。
私たちは、アジアの近隣諸国との間に摩擦を生じ、国内でも意見の対立を招く首相の靖国参拝は慎重にすべきことを繰り返し主張してきた。もちろん首相にも信仰の自由はある。国に殉じた人々を国家が慰霊するのは当然だ。しかしいまの形での参拝は控えるのが賢明であろう。
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