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  home > 今日の朝刊 2004年04月08日(木)付  

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    ■靖国参拝――小泉首相への重い判決

     3年前の夏を思い出す。靖国神社の売店で「ガンバレ純ちゃんの好景気まんじゅー」がよく売れていた。

     就任後初めて小泉首相が靖国神社に参拝し、話題を呼んだためだ。終戦記念日の前々日だったが、8月15日には前年の2倍以上の人が靖国神社を訪れた。

     この時の首相の参拝について、福岡地裁は政教分離を定めた憲法に違反するという判決を言い渡した。

     判決は首相の参拝について「職務行為」としたうえで、憲法で禁じられている宗教的活動に当たると判断した。「憲法上の問題、国民や諸外国から批判がありうることを十分に知りながら、あえて自分の信念や政治的な意図で参拝を行った」と指摘した。

     首相の靖国参拝をめぐる司法の判断は分かれてはいるものの、「違憲の疑いが強い」「違憲だ」という判断がすでに何度も出ている。

     ところが、今回の判決後、首相は「おかしいねえ。なぜ憲法違反かわからない」と述べた。靖国参拝は今後も続けていくという。

     就任後すでに4回も参拝した首相である。自分の信念を貫く姿勢に拍手を送りたいという人もいるかもしれない。だが、ちょっと待ってほしい。首相がこだわる靖国神社とはどんなところなのか。半世紀以上前にさかのぼってみよう。

     戦前の日本では、国家神道に事実上の国教的な地位が与えられ、神社への参拝が強制された。その国家神道の要が靖国神社だった。靖国神社は軍の宗教施設としての性格を持ち、軍国主義の精神的な支柱という役割を果たした。

     日本国憲法が国は宗教的活動をしてはならないと戒めているのは、そうした過去の反省に立っているからだ。首相は「伊勢神宮、あれも違憲?」と語った。政教分離という点では首相の参拝に違憲の疑いがあるが、靖国神社が背負う歴史を見れば同列には論じられない。

     小泉首相が個人として戦没者を追悼したいという思いは理解できる。戦場で肉親を失った遺族らが靖国神社に参りたいと思うのも自然な感情だろう。

     しかし首相は三権のひとつ、政府の長である。個人的心情だと開きなおる前に自分の立場を考えなければならない。首相が参拝すれば、それは靖国神社を特別扱いし、援助していると見られても仕方がないだろう。憲法違反という司法の警鐘に素直に耳を傾けるべきだ。

     しかも、靖国神社にはA級戦犯が合祀(ごうし)されている。中国や韓国は、そのため首相の参拝に反発している。

     首相の発案でつくった懇談会が新しい国立の追悼施設を提言している。靖国参拝にこだわる首相はもう関心を失ったのか、計画は一向に進まない。

     「違憲性についての判断を回避すれば、参拝が繰り返される可能性が高い。違憲性を判断することを自らの責務と考えた」。判決はそう結ばれている。


    ■イラク騒乱――「ベトナム化」を恐れる

     これはもう「占領軍対テロ組織」という構図ではとらえきれない。民衆の抵抗とそれを鎮圧しようとする占領軍との全面衝突と言うべきだろう。

     バグダッド西方のラマディで起きた市街戦で、米兵12人が死亡した。「大規模戦闘終結」を宣言して以降、単一の地上戦の米軍の犠牲者としては最も多い。焼き殺された米国人の遺体を民衆が引き回したファルージャでは、米軍の攻撃で多くの市民が命を失った。

     比較的平穏だったシーア派地域のバスラでも英軍とイラク人の銃撃戦があった。イタリア軍やスペイン軍との交戦も伝えられる。騒乱は各地に広がった。

     これまでと異なるのは、南部を中心としたシーア派から占領軍に対する武装反乱の動きが顕在化したことだ。

     国内最大の勢力であるシーア派は、フセイン政権の弾圧に苦しんできただけに米英軍の侵攻を歓迎した。だがここに来て不満が噴き出した。米国が主導する主権回復の方式では新生イラクの主導権がとれない、という理由からだ。

     シーア派といっても一枚岩ではない。占領への抵抗を呼びかけたのは、強硬派のサドル師とその武装民兵だ。最高権威とされるシスターニ師に比べ、支持基盤は決して広くない。この蜂起には、サドル師がシーア派内での影響力を強めようと民衆をあおった面もあろう。

     だが占領軍のやり方が火に油を注いだことも間違いない。サドル師が発行している新聞を発禁にし、腹心を逮捕したことが、シーア派のデモと占領軍との衝突をいっきに拡大させた。シーア派の民衆はフセイン政権の崩壊を喜んだが、占領軍を歓迎しているわけではないのだ。

     抵抗を武力で押さえ込もうとすればイラク人の死傷者がますます増え、反米感情は深まる。それが抵抗をさらに広げる。そうした悪循環を恐れる。

     米大統領報道官は衝突の拡大にも「我々の決意は揺るがない」と表明した。占領当局はスンニ派武装勢力の制圧をめざす一方で、サドル師とも妥協しない方針だ。米軍増派の検討も始まった。

     ブッシュ政権の強硬な姿勢には、イラクに主権を渡す予定の6月末までに、抵抗勢力の力をできるだけそいでおこうという意図がうかがわれる。円滑に主権を移譲して暫定政府を立ち上げることが、秋の大統領選挙で再選されるための大前提だという判断があるからだろう。

     主権移譲を延期すべきだという議論が足元の共和党内からも出るなかで、ここは退けないということかも知れない。

     しかし、武力だけで解決を急ごうとしても、この1年重ねてきたのと同じ過ちをまた繰り返すことにならないか。

     悪化する一途の情勢は、その活動が制約されるなどサマワの自衛隊の活動にも影響を与えている。

     民主党のケネディ上院議員はいまのイラクを「ブッシュのベトナム」と呼び、泥沼化したベトナム戦争の再来だと指摘した。その通りにさせてはならない。



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