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  home > 今日の朝刊 2004年04月02日(金)付  

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    ■年金審議――一元化の土俵で議論を

     サラリーマンや自営業者など、職業によって違う年金制度の一元化が望ましいと、小泉首相が言いだした。

     首相は抜本改革に向けた協議を民主党に呼びかけもした。この動きが、年金改革法案の審議が始まった国会に波紋を広げている。

     政府案を国会に提出した後になって、首相が法案の不備を認めるのは異例だが、安心できる年金制度づくりへの第一歩となるなら悪いことではない。

     年金は、国民全員が入る基礎年金を土台に、自営業者はこれを国民年金とし、サラリーマンはその上に厚生年金を、公務員は共済年金を積む形だ。それぞれ保険料や支給額も違う複雑な制度だ。

     そのうえ、厚生年金などは所得に応じた保険料なのに対し、国民年金は所得に関係ない定額の保険料だから、所得の低い人は払いづらい。公務員とサラリーマンの年金の間には官民格差がなお残る。負担と給付の関係が見えにくい、こうした仕組みが年金不信の背景にある。

     ところが、国会に出された政府案は負担増と年金水準のカットが柱で、制度の不備にはまったく手をつけていない。坂口厚生労働相が「政府案こそ抜本改革だ」と意気込んでも、支持がさっぱり集まらないのはそのためだ。

     首相の提唱を機に、政府も民主党も抜本的な年金改革についての協議を進め、合意を実らせてもらいたい。政権が代わるたびに制度が変わるようなことになったら、国民は安心できない。

     民主党は、すべての国民が加入する所得比例年金制度の創設を検討している。所得が低いために年をとってから受け取る年金が少ない人は、税で賄う最低保障年金で支える。スウェーデンの年金改革を手本にした方式で、厚労省が将来のモデルとして考えている案にも近い。

     年金の一元化を実現するには、自営業者らの所得をどう把握するかをはじめ課題は多い。だが、首相と民主党が一元化という共通の土俵に乗るのなら、話し合いは十分可能なはずだ。

     民主党からは「首相が政府案は抜本改革でないと認めるのなら、法案を取り下げるべきだ」との声があがっている。これには賛成できない。

     保険料をずっと据え置いてきたため、厚生年金や国民年金の財政は赤字に転じ、積立金の取り崩しが始まっている。ここでまた保険料の引き上げを見送れば、結局、これからの年金の支え手となる若い世代の負担を重くすることになる。それでは、若者の心を年金からもっと離れさせてしまいかねない。

     ここは、首相が政府案の不備を認めたうえで数年間の時限立法として成立させ、年金財政の悪化を防ぐ。その間に与野党の協議で抜本改革案を作る。こうした方向が妥当ではないだろうか。

     年金制度の改革は国家百年の大計である。政争の具にはなじまない。間違っても、強行採決で事を決める愚を繰り返してはならない。


    ■国旗・国歌――甲子園とは話が違う

     東京都立高校などの卒業式をめぐって国旗・国歌の強制に反対する社説を2度掲げた(3月18、31日)ところ、思わぬ批判をいただいた。

     産経新聞のコラム『産経抄』は「そうまでして国旗・国歌を貶(おとし)めようとする論調は、なんとも悲しい」と、朝日新聞を名指しで批判(1日)。読売新聞は「甲子園では普通のことなのに」という社説(31日)を掲げ、春夏の高校野球の開会式などで行われる国旗掲揚や国歌斉唱は「国旗や国歌が、暮らしに溶け込んでいることを実感させる光景だ」と書いた。朝日新聞社が主催者の一人であることを意識してのことに違いない。

     さて、私たちの主張は何か。卒業式で日の丸を掲げるな、君が代を歌うな、などと言っているのではない。処分という脅しをかけて強制するのは行きすぎだと主張しているのだ。それがなぜ国旗・国歌を貶めることになるのだろうか。

     戦前の経緯や思想信条、宗教などの理由で、国旗・国歌に複雑な気持ちをもつ国民がいるのは事実である。どうしても嫌だという人に無理やり押しつけるのは、民主主義の国の姿として悲し過ぎる。私たちはそう言っているのだ。

     確かに甲子園の開会式では国旗掲揚と国歌斉唱が行われ、役員、選手には脱帽を求め、観客には協力をお願いしている。しかし、処分をたてに強制などはしていない。もちろん監視員などいないし、罰則もない。現に起立も斉唱もしない観客はいるが、だからといって退場を求めることはありえない。

     だが、都教委は違う。170人余りの教職員を戒告とし、5人の嘱託教員の契約更新を取り消した。明らかに式を妨害し、混乱させたなら別だが、起立しなかったり退席したりしたことが懲戒処分や雇用機会を奪う理由になるのか。憲法が保障する「思想及び良心の自由」を侵す疑いが強いと考える。

     国旗・国歌法が99年に成立したとき、当時の小渕首相は学校での扱いについて「頭からの命令とか強制とか、そういう形で行われているとは考えておりません」と国会で答弁した。当時の野中官房長官も「強制的にこれが行われるんじゃなく、それが自然に哲学的にはぐくまれていく、そういう努力が必要」と答えていた。この記録を生徒に読ませ、「あなたの学校では首相らの約束が守られていますか」と尋ねてみたらいい。

     多民族国家の米国では統合の象徴としての国旗への思いがとりわけ強い。国旗に対する「忠誠の誓い」を生徒に義務づけている公立学校も多い。そんな米国ですら「誓い」を拒む権利は連邦最高裁が1943年に認め、同様の判例が重ねられてきた。それこそ国家が守らなければいけない一線だ、というかのように。

     しろじに あかく ひのまる そめて ああ うつくしい にほんの はたは

     小学1年生は、みんなこの歌を習う。日の丸を美しいと思う心は、強制して育てるものではない。



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