社説・春秋    

春秋(10/23)

 この四半世紀で最悪の被害を列島各地にもたらした台風23号が去って、ようやくさわやかな秋空が巡ってきた。東京では初冠雪した富士山の美しい姿が夕景にのぞめた。すでに霜降(そうこう)。風雨に傷んだ山間では紅葉前線が歩みを早めている。

▼この秋は全国各地でクマが里の民家などに出没し、被害を広げている。切れ目なく襲う台風に温暖化が重なり、山中の木の実が減ったことから冬支度の食糧を求めて山から下りてくるらしい。殺されるのは忍びないと自然保護団体が餌にするドングリを募ったところ、さばき切れないほどの量が全国から集まった。

▼山奥で孤独に暮らす老人に招かれてお礼をしようとしたクマが、昼寝時のハエを追い払おうとして手近にある敷石を老人の顔に投げつけ、死なせてしまう。ラ・フォンテーヌのこの寓話(ぐうわ)は愚直に過ぎる友人関係を皮肉っているが、ぬいぐるみや童話などの人気者は都市化する環境のなかで嫌われ者になりかねない。

▼欧州の歴史は伐採による森林破壊で野生動物が森を追われて生態系が変化し、ペストなど疫病の流行を招いた。動物の行動の変化は自然環境の危機を示すシグナルでもあろう。山を追われたクマが農作物や家庭の食糧をねらうばかりか、人を襲って被害を広げれば捕殺を迫られる。「友好」は取り戻せないものか。


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