|
Kyoto Shimbun 2004.03.06 News 質量生み出す仕組み証明 「クォーク凝縮」 東大ら共同チーム
質量を生む仕組みはよく分かっていなかったが、約40年前、質量を生むメカニズムとして理論的に予言された「クォーク凝縮」という現象の存在を世界で初めて証明した。 今回の結果は、物になぜ質量があるのかという物理の基本問題の謎解きを大きく前進させる成果として注目される。 物質の主要な構成要素である陽子や中性子は、物質の基本粒子クォーク3個でできている。しかしクォーク3個分の質量は陽子や中性子の総質量のわずか約2%で、残る98%の由来が謎だった。 原因として考えられたのがクォーク凝縮。陽子などの周囲の空間に、目に見えない無数のクォークが対になって潜み、現実のクォークはそれらにまとわりつかれることで動きにくくなった結果、質量が増えるとした。 ビッグバン直後、この現象によって陽子や中性子の質量が生まれたとされ、凝縮は真空中で最も強く、高温高密度になるほど弱まるとされる。 この説を証明するため、早野教授らはドイツの重イオン研究所(GSI)の加速器を使って実験。クォーク2個ででき、スズの原子核を回る現象が知られていたパイ中間子を、スズの原子核内に入れ、その動きを詳しく分析して凝縮の強さを間接的に測定した。密度の高い原子核中心部は真空中に比べ凝縮が約35%弱まっていることを突き止めた。 この値は理論の予想値と非常によく一致しており、クォーク凝縮の存在が明確に裏付けられた。 早野教授は実験を15年前に着想。「必要なタイプの加速器は世界中でGSIにしかなかった。しかしアイデアも測定装置もわれわれのオリジナル。別種の中間子を使った実験でクォーク凝縮の性質をさらに調べたい」と話している。 【クォーク】 物質の基本粒子。「アップ」「チャーム」「トップ」など6種類ある。クォークの間に働く「強い相互作用」という力のため単独では存在できず、3個集まった陽子や中性子、2個集まった中間子の形を取る。クォークと、電気的性質が反対の「反クォーク」が対となって周囲から見えなくなるクォーク凝縮が起きると、その空間を動く「見えるクォーク」は抵抗を受けて質量が重くなると考えられている。(共同通信) |
|
|
サイエンス |
(2004-03-07) |
|
「物になぜ重さ?」仕組みの一段階確認 東大教授ら 早野龍五・東京大学教授(原子核物理学)や理化学研究所のグループが、物質に質量が生まれる仕組みの一段階と考えられているクオーク凝縮現象を実験で確認したとする論文を、米物理学会誌に発表した。「物になぜ重さがあるのか」という物理学の基本問題を解明する上で、注目を集めそうだ。 早野教授らは、ドイツの重イオン研究所の加速器を使い、基本粒子のクオーク2個でできているパイ中間子をスズの原子核内に入れ、原子核との間で生じる引力の強さ(束縛エネルギー)を測定することで、凝縮の強さを間接的に調べた。 すると、真空中に比べ、引力の強さは約3割減少しており、理論値と一致。理論を裏付ける結果が得られたとしている。論文発表は今年2月。 素粒子物理学の標準理論では、宇宙誕生時に生まれたクオークなどの素粒子には元々は質量はなく、宇宙誕生の大爆発直後に真空中に潜んでいたヒッグス粒子の影響で、質量を持ったと考えられている。 しかし、このクオーク各3個からできている陽子や中性子の総質量は、クオーク3個分の質量以上に重い。このため、陽子や中性子が質量を獲得した背景には、クオーク凝縮が起きているとの理論が85年に発表されていた。 早野教授は「標準理論を立証していく重要な成果の一つだ」と話している。 (03/07 00:35) |